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川を見てゐた手だらうかうつすらと電車の窓にしろき跡あり

「造本装幀コンクール」レポート④

「コデックス装」という言葉を知りました。糸で綴じられている背がむきだしで、背表紙をつけない装丁です。半田也寸志写真集『IRON STILLS アメリカ、鉄の遺構』(出版社:ADP、装幀者:葛西薫・増田豊、印刷・製本:山田写真製版所)のコデックス装が話題になりました。

IRON STILLS  アメリカ、鉄の遺構

IRON STILLS アメリカ、鉄の遺構

 

 ページがぱっくりと水平に開くので、見開きの巨大な写真が見やすい。背の糸は黒。「黒糸を使っているため、『鉄=骨格』という構造体をより強く意識させ、効果的」(ミルキィ・イソベ氏)との評も。テーマである「鉄」が、「本」という物質で比喩的に表現されていることがよく分かります。「装幀放談」でもそのような話をしていましたが、その比喩を読む(深読みする)のが、読者としては非常に愉しいわけです。

さて、パンフレット掲載の柏木博氏による「総評」より引用します。

「(コデックス装は)背表紙が考案される以前の装幀の方法だ。2世紀頃に巻子本に代わって登場したデザインで、当初はキリスト教聖書に使われたと考えられている。codexはラテン語で木の幹を意味するようだ」

なんと2世紀! そんなに古いデザイン! しかし、この数年コデックス装をよく見るそうです。そういえば、濱崎さんの『世界で一番美しい樹皮図鑑』もコデックスでした。さらに「codexはラテン語で木の幹を意味する」に瞠目! おお! となると「樹皮図鑑」は、表紙は樹皮、背は幹をモチーフとし、本全体で樹木の胴を表していることになりますね。うおーじわじわと感動。再び「樹皮図鑑」をナデナデ。