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川を見てゐた手だらうかうつすらと電車の窓にしろき跡あり

印刷博物館

印刷博物館http://www.printing-museum.org/に行きました。興奮しました。ブックデザイン展は終わっていたのでまた来年。

興奮1 壮大。人類が洞窟に壁画を描いた太古から印刷を語り起こす。

興奮2 徳川家康が作った銅活字「駿河版活字」。ほんもの。

興奮3 3Dプリンティングは、やはりすごいらしい。失われた活字の複製も可能。

興奮4 VRシアター。カーブした巨大なスクリーンのあるシアターで、バーチャルリアリティーを体感するプログラム。ポンペイの邸宅の一つ「黄金の腕輪の家」の当時の風景を再現した映像を、係の方の生のナレーションを聞きながら見ます。臨場感、浮遊感がとてつもなかった。現地をガイドされながら歩く感覚でした。それにしても、「印刷」技術の拡大の先にはVRもあるのですね。

興奮5 偉人・本木昌造。一生、良質な活字を作ることを考えた人。幕末から明治期に生きた人ですが、長崎に生まれて、通詞をやりながら活字に興味を持って、長崎製鉄所の仕事をしながらその隣に活版伝習所を作るという、この流れ。なんだろうこの生き方。熱い上に、肉がみっちり詰まっている。

興奮6 植字ゲーム。3回やりましたが、4点の壁を越えられず。4点以下だと「まだまだ初心者ですね」とゲーム機に鼻で笑われるのです。

興奮7 「ギャレー(ゲラ)」との遭遇。16世紀後半のヨーロッパ最大の印刷業者クリストフ・プランタンの工房での、活版印刷の工程を再現した映像がありました。なんとなく再生したのですが、「植字工はステッキ(注・活字を並べる細長いケース)に活字を拾っていきます」というようなナレーションの後、

 ギャレー(ゲラ)

というテロップとともに、四角い木のお盆のような箱が! ゲラです。これがガレーです。活字を拾ったステッキを「ゲラ」に並べ、ずれないように「ゲラ」の四方を紐でぐるぐる巻きにするのです。それを印刷に回します。私はついにガレーを目にした喜びのあまり、この映像は3回見ました(一人で3回見てもまったく問題がないほど館内が空いていたことをお察しあれ)。再現映像とはいえ、「ゲラ」の使い方を見ることができて幸せです。

興奮8 印刷の家。ガラス張りの部屋に、黒光りする美しい印刷機が何台も。活版印刷のワークショップもあるとのことです。

興奮9 「本は粗製乱造に向かう」。どこのコーナーか忘れましたが、近代ヨーロッパで印刷技術が発達した結果、本は粗製乱造に向かった、と。装丁の質が劣化していくことを危ぶんだ人々は、装丁コンクールを行うなどして、その質の向上に努めた、と。そんな話が心に残りました。「本」が安さを目指す、のは近代以来当然の流れなのだ、と、なんとなく知っていたことをはっきりと教えてもらいました。安価だからこそ、多くの人が、そこに書いてあることを手に入れられるわけで。美しい装丁を、という考えは、突き詰めれば時代錯誤な貴族趣味に至ってしまうのでしょうか。いや、そういうのとはちょっと違う、と思いまして。結局、「危ぶんだ人々は、装丁コンクールを行うなどして、その質の向上に努めた」という、何か瀬戸際のあがきのようなことが、美しい物を、良い物を作り、残していくはずだ、と私は思っています。ひどくささやかな運動に思えますが、素直に共感できるのはそういうところ。抗いがたい波に向かって抵抗の犬かきをする、みたいな。短歌もちょっとそういうところがある。とたった今、思いました。犬かき短歌。

以上、印刷博物館の勧めでした。

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